Vol. 62 / Series IX Spring 2026
— Lance Wyman · Vicente Rojo · CDMX —
N° 62 / México
/ MEXICO 68 · METRO · MUSEO · CARTEL · SOL Y SOMBRA

¡México!
Diseñar
la nación.1968 オリンピックから現代まで、
古代と近代が同居するメキシコ・グラフィック。

Mexico is not one Mexico.
古代から未来まで、すべての時代が同時に生きている。
デザインの仕事は、それを混乱させずに語ることだ。 — Vicente Rojo, 1980

1968:
The Logo
That Built
a Nation.

1968 年メキシコシティ・オリンピックは、Lance Wyman (米国) と Eduardo Terrazas が率いるデザインチームが、史上初めて 都市全体を一つの視覚言語 で包み込んだ事件だった。Op-Art 風の同心円ストライプ、スポーツ別ピクトグラム、競技会場の色分け、空港からスタジアムまでのサインシステム ── すべてが連続的なグラフィック・エクスペリエンスとして設計された。

その方法論はメキシコシティ地下鉄 (1969 年開業) の駅シンボル (各駅にピクトグラム) に直接受け継がれ、そして世界中の都市インフラ・グラフィックの規範となった。

古代と近代の同居

メキシコのグラフィックデザインを理解する鍵は、Octavio Paz が 『孤独の迷宮』 で描いた精神 ── 古代マヤ・アステカ、植民地スペイン、独立期、革命期、近代化、現代 ── すべての歴史層が同時に生きている文化、にある。デザインは常に、複数の時間軸を同時に視覚化する仕事であり続けた。

1920 年代の壁画運動 (Diego Rivera、José Clemente Orozco、David Alfaro Siqueiros) が、社会的責任を背負った大規模ヴィジュアルの伝統を確立。1950–60 年代に Vicente Rojo (スペイン亡命) が、出版社 Era とメキシコシティ大学出版会で近代タイポグラフィを根付かせた。1960 年代後半、Lance Wyman (米国出身) の 1968 オリンピックと地下鉄 CI が、メキシコを 世界的デザイン都市 へ押し上げた。

21 世紀の現在、Quiñonez、Daniela Rojas、FUSE Lab などが、現代美術館、Cinemateca、Museo Jumex などの文化機関の CI を担当。先住民言語によるタイポグラフィ実験、ストリート・ヴィジュアルとの混淆、フェミニスト・グラフィックなど、世界水準で多様性を発信する地域となっている。

1922
壁画運動 / Vasconcelos 文化省
1956
Vicente Rojo メキシコ亡命
1960
Editorial Era 創設 / Rojo AD
1968
Wyman / Terrazas Olympic CI
1969
Metro CDMX 開業 / Wyman 駅シンボル
1995
CENTRO デザイン学校 設立
2009
Anagrama / Monterrey 設立

Six Maestros

01

Lance Wyman

b. 1937 (USA → MEX)

米国出身、1968 メキシコシティ・オリンピックの CI で永久にメキシコと結ばれた。Mexico 68 の同心円ロゴ、スポーツ別ピクトグラム、地下鉄の各駅シンボル、Washington Metro、Smithsonian Zoo の CI も担当。

02

Vicente Rojo

1932 — 2021 (ESP → MEX)

スペイン亡命者。Editorial Era の AD として 50 年。書籍、雑誌、展覧会カタログ、現代美術。メキシコの近代タイポグラフィの父。同時に画家としても国際的評価を確立した稀有な存在。

03

Eduardo Terrazas

b. 1936

1968 オリンピックの実質的アートディレクター。Wyman とコラボし、現地のチームと文化を翻訳した。後に建築・現代美術へ展開。Tate Modern や MoMA の所蔵作家でもある。

04

Pedro Friedeberg

b. 1936

イタリア生まれ、メキシコ育ち。シュルレアリスム家具・グラフィックの巨匠。"Hand-Chair" (1962) で世界的に有名。Bauhaus、サイケデリック、メキシコ古代美術が交わる独特の図像世界。

05

QuiñonezStudio

est. 2010

メキシコシティの新世代スタジオ。Museo Jumex、FONCA、現代美術館の CI を担当。Wyman の方法論を継承しつつ、デジタル時代のヴァーサタイル・アイデンティティに翻訳。

06

AnagramaStudio

est. 2009 · Monterrey

Monterrey 拠点。世界クラスのブランディングを商業領域で展開し、メキシコのデザインを国際舞台に押し出した立役者。WeWork メキシコ、Bansi、Modelo Especial などの CI。

Six Trabajos

68
MEXICO 1968 · WYMAN / TERRAZAS
Mexico 68 Identity Wyman · 1968
METRO CDMXSTC · 1969
Metro CDMX Wyman · 1969
Editorial EraVICENTE ROJO · 1960
Editorial Era Rojo · 1960
Día de MuertosFUSE LAB · 2018
Día de Muertos FUSE Lab · 2018
CinematecaUNAM · 1985
Cinemateca UNAM UNAM · 1985
Museo JumexQUIÑONEZ · 2013
Museo Jumex Quiñonez · 2013
01

Layered Time

古代マヤ・アステカ、植民地、独立、革命、現代。複数の時間層を一画面に同居させる手腕。

02

Saturated Color

赤・黄・青の極彩色、対比、混色を恐れない。明るすぎる色彩を恥じない大陸的姿勢。

03

Public CI

地下鉄、空港、museo、文化センター。公共機関の CI が世界水準で設計され、市民の日常を覆う。

04

Mural Inheritance

Rivera ・Orozco・Siqueiros の壁画運動の DNA。グラフィックは社会的・歴史的責任を背負う、という意識。

¡MX!

メキシコのグラフィックデザインが世界に手渡したものは、「ピクトグラムを国民的アイデンティティに昇格させる方法」 である。1968 年の Wyman + Terrazas のオリンピック CI は、世界中の都市の公共サインとイベント・ブランディングの規範となった。その後の München 1972、Montréal 1976、Barcelona 1992 まで続く現代オリンピック・ヴィジュアルの直接の祖先。

同時にメキシコは、古代と近代を平等に並べる 視覚言語を確立した。Wyman の同心円は古代テオティワカン文明の壁画から派生し、Vicente Rojo の本のデザインはマヤ象形文字とスペイン古典書体を同居させた。Pedro Friedeberg の家具にはアステカの幾何学が宿っている。

21 世紀の現在、Anagrama や Quiñonez のような世界水準のスタジオがラテンアメリカから国際舞台に進出し続けている。メキシコは 「グローバル・サウスからの北回り」 の最先端であり、Buenos Aires、São Paulo、Bogotá、Lima と共に、ラテンアメリカ・グラフィックの中心地としての地位を確立し続けている。