Eric Gill
Edward Johnston の弟子。Gill Sans (1928)、Perpetua (1925)、Joanna (1930) を設計。彫刻家・タイプデザイナー・思想家として、20 世紀英国タイポグラフィの礎を築いた人物。
良いデザインは、
言葉のように
使い慣れた古い椅子のように、
意識されない時、最も役に立つ。 — Alan Fletcher, 2001
1935 年、Allen Lane が創設したペンギンブックスは、ハードカバーの 1/10 の価格 6 ペンスでペーパーバックを売る革命を起こした。Edward Young が設計した 三段組ジャケット ── 上下にジャンル別の色帯 (オレンジ=フィクション、緑=犯罪、青=伝記)、中央に書名 ── は、書籍デザインの世界規範となった。
1947 年、ナチスを逃れた Jan Tschichold が AD に就任し、3 年間で約 500 冊の書籍を統一規格に整備。1961 年には Romek Marber が犯罪小説シリーズを引き継ぎ、写真とフォトモンタージュで近代化した。出版社のグラフィック標準を国家規模で定着させた、世界唯一の事例である。
イギリスのグラフィックデザインは、二つの相反する力学が交錯する場所に立っている。一方には、伝統 ── 王立芸術アカデミー、大学出版会、Caslon、Baskerville、Eric Gill の Gill Sans、Edward Johnston の Underground 書体、Penguin Books の編集規範。もう一方には、反抗 ── パンクの DIY ジャケット、80 年代『The Face』のグランジ・タイポグラフィ、90 年代 Sheffield 発の The Designers Republic。
この対立の興味深さは、両者が互いを排除しないことだ。Pentagram の Alan Fletcher は Caslon を愛しつつ毎日それを破壊する 仕事をした。Neville Brody は古いポスター書体を解体しつつ、Penguin の正統な後継者として自認していた。イギリスのデザイン精神は 「礼儀正しい反逆」 ── tradition に noisy なコメントを差し込む芸 ── として要約できる。
もう一つ、この国のデザインは 公共設計の伝統 を持つ。1916 年に Frank Pick がロンドン地下鉄に Edward Johnston の専属書体を依頼したことに始まり、1957 年の Margaret Calvert + Jock Kinneir による全国道路標識システム、Royal Mail の切手、BBC のオン・スクリーン・グラフィックまで。国民全員が日常的に高品質なデザインに触れる国 である。
Edward Johnston の弟子。Gill Sans (1928)、Perpetua (1925)、Joanna (1930) を設計。彫刻家・タイプデザイナー・思想家として、20 世紀英国タイポグラフィの礎を築いた人物。
ライプツィヒ生まれ、ロンドンで Penguin Books の AD として 1947–49 年に約 500 冊を整備。「Penguin Composition Rules」を執筆し、出版社の社内タイポグラフィ規範を体系化した最初の人物。
Jock Kinneir と共に 1957 年から英国全土の道路標識システムを設計。専用書体「Transport」「Motorway」を含む。世界で最も広く使われた公共サインデザインの一つ。
Pentagram の共同創設者にして英国デザインの代名詞。Reuters、V&A、Lloyd's of London、Penguin Books の CI を担当。書籍『The Art of Looking Sideways』(2001) は彼の遺作。
1981–86 年『The Face』誌の AD として、毎号タイポグラフィを再発明する伝説的なエディトリアル。FontFont 設立、Research Studios、後にロンドン芸術大学副学長。世代を象徴する反逆者。
Sheffield に拠点を置く TDR の創設者。Warp Records、PlayStation、Coca-Cola、Pop Will Eat Itself のジャケットを通じ、1990 年代英国レイブ・テクノ文化のヴィジュアル言語を確立した。
250 年前に作られた Caslon、Baskerville、Bodoni を、現代でも日常的に使う唯一の文化圏。書体史の連続性を断たない。
Royal Mail、BBC、NHS、TfL、Royal Society。国家機関が世界水準のデザインを公共サービスとして発注する。
Pentagram、Wolff Olins、NB Studio。英国デザインの中核には常に 視覚的なジョーク がある。直球より捻り。
出版社が一つの「ブランド・グラフィック・スタンダード」を国家規模で確立した世界唯一の事例。Tschichold、Marber、Pelham Books、Penguin Classics 各シリーズ。
5 名の partner で始まった協同組合型スタジオ。現在はロンドン・NY・ベルリン・オースティンに 24 名の partner。世界最大の独立系デザインスタジオ。
英国デザイン教育の双璧。RCA のグラフィック修士課程は世界最高水準。CSM はパンクとファッションの牙城。
Design and Art Direction Awards。広告・グラフィック界のオスカー。Pencil 賞は世界中の制作者の目標。年鑑が当年の業界基準を可視化する。
イギリスのグラフィックデザインが世界に手渡したものは、「伝統と反逆を同じ机の上に並べる方法」 である。Penguin の三段組ジャケットと The Face のグランジ、Gill Sans と FF Meta、地下鉄の Johnston Sans と Designers Republic の蛍光ロゴ —— これらが互いを排除せずに並走するのが英国の自然な姿である。
もう一つの遺産は、「公共の場のデザイン」に対する真摯な態度である。道路標識、地下鉄、郵便切手、紙幣、BBC、NHS のヴィジュアル・アイデンティティ。これらが世代を超えて高水準を維持し、市民全員のデザインリテラシーを底上げし続けている。Pentagram、Wolff Olins、NB Studio、Made Thought ── 世界水準の独立スタジオが連綿と生まれ続けるのは、この公共発注の伝統が育ててきた成果である。
21 世紀の現在、Apple、Google、Spotify、Airbnb のヴィジュアル文化を支える人材の多くは、RCA や Central St Martins の卒業生である。Pentagram は今も世界最大の独立スタジオであり続け、英国デザイン界は 「集団的な技芸」 として、世界中のデジタルプロダクトに通底する基準を提供し続けている。
Series IX は世界各国・地域のグラフィック文化を横断する旅です。ここまで 7 巻で、ヨーロッパ・東アジアの主要文化圏を概観しました。次回以降、北米、ラテンアメリカ、東欧の他地域、アフリカ、中東、東南アジアへと旅は続きます。
Polska / Polish Poster
Nederland / Total Design
Italia / Olivetti → Memphis
日本 / 戦後グラフィック
Schweiz / Swiss Style
Deutschland / Bauhaus → Ulm
UK / Penguin → Pentagram