全宇宙誌
松岡正剛との共作。832 ページの「宇宙の総覧」。マンダラを誌面の構成原理として完全実装した、20 世紀ブックデザインの記念碑。
1932 年、東京生まれ。1955 年、東京芸術大学美術学部建築科卒業。当初は 建築家を志していたが、卒業後グラフィックデザインへ転向した経歴を持つ。この事実が、彼の「本を建築として扱う」方法論の根を成している。
1964 年、ウルム造形大学 (HfG Ulm — Bauhaus の正統な後継、Vol. 18 参照) の客員講師として渡独。Otl Aicher、Tomas Maldonado らから戦後ヨーロッパのデザイン教育を直接吸収する。帰国後、彼は西洋モダニズムと日本の伝統を 並置 する独自の立場を確立した。
1970 年、雑誌『遊 (Yū)』(松岡正剛編) の創刊に参加。1971 年、雑誌『銀花』(文化出版局) のアートディレクター就任。両誌は日本の編集・装幀文化のレベルを決定的に押し上げた。
1979 年、彼の最大の仕事 ── 松岡正剛『全宇宙誌』 (工作舎) を装幀。古今東西の宇宙観を 832 ページのマンダラとして編纂した、戦後日本のブックデザイン史上最も野心的な一冊。
並行してアジア各地のマンダラ、東洋宇宙観の研究も深め、『マンダラ発生』『時間軸の表現』など独自の理論書を多数執筆。1996 年、神戸芸術工科大学教授就任、後進の育成に注力した。
松岡正剛との共作。832 ページの「宇宙の総覧」。マンダラを誌面の構成原理として完全実装した、20 世紀ブックデザインの記念碑。
松岡正剛編集。多分野横断 ─ 哲学、科学、芸術、神話 ─ を一冊に詰め込んだ伝説の雑誌。誌面構造そのものが知の宇宙論。
日本の伝統工芸を主題にした季刊誌。40 年間のアートディレクション。「銀」と「花」の象徴で、職人の手仕事と現代編集の橋渡しを成した。
武満徹の現代音楽 LP ジャケット連作。波紋・空・宇宙の象徴を多層に重ねた抽象構成。「音を見る」装幀の系譜。
東寺の国宝・両界曼荼羅を写真と装幀で蘇らせた美術書。マンダラ研究を本の構造そのものに翻訳した代表作。
岩波書店、中央公論、平凡社など、戦後日本の主要出版社の学術書・百科事典・全集を多数装幀。書架に並んだだけで「杉浦の本」と分かる視覚的署名。
東洋宇宙観の中心 - 周辺構造。中心に主題、外側に周辺要素を同心円的に配置する構図。彼の装幀の根源原理。
一枚の誌面に複数の論理を重ね合わせる。タイトル、本文、注釈、図版、目次 ─ 異なるレイヤーが同時に語る複声楽的な構造。
縦書きと横書きを共存させ、視線の流れに二つの軸を作る。日本語装幀の根源的可能性を最大限引き出した。
文字を「読むもの」ではなく「象徴」として扱う。漢字一字を書影の中心に据え、瞑想の対象とする禅的アプローチ。
杉浦の遺伝子は、現代日本のあらゆる装幀現場に流れている。祖父江慎の規格外装幀、鈴木成一の現代文学カバー、名久井直子の精緻な手仕事、佐藤亜沙美の編集デザイン ── すべて杉浦の弟子か、その系譜にある。
国際的には、Irma Boom (オランダ)、Peter Mendelsund (Knopf, US) ら世界的装幀家が、杉浦の方法論を「Asian Book Design」の代表として参照している。MoMA の永久収蔵作品にも複数の杉浦作品が含まれる。
松岡正剛は『全宇宙誌』以来、杉浦の最も重要な編集パートナーであり続けた。両者は 編集と装幀の融合 という思想を半世紀にわたって実践し、戦後日本の知の風景に決定的な影響を残した。