VOL. 13 SERIES III / 2026
— Designing the public surface —
Wayfinding / 環境
特集 / FEATURE No. 13 — APPLIED DESIGN / Environmental & Wayfinding

WAY FINDING. — 空間に を描く仕事 —

Information— インフォメーション
Elevators— エレベーター →
Restrooms— お手洗い ↗
Emergency Exit— 非常口 →

サインデザインは、空間に文法を与える仕事である。建築が骨格を作り、サインが「迷わない」を実装する。

— Premise / 前提

空港、病院、美術館、地下鉄、駅構内 — 人がはじめて訪れる空間で、矢印・色・ピクトグラムが沈黙のガイドとして機能する。

— Coverage

本号は、なぜサインが必要か、ISO 規格 4 色、サインの 4 種類、サインの解剖、ピクトグラムの歴史を扱う。
— 01 / Premise

なぜ サイン か。

Without it, no public space works

「迷わない」 こそが
美しい設計である。

建築家がどれほど美しい空間を作っても、訪問者が どこに行けばよいか分からない 状態を残せば、その空間は機能しない。サインデザインは、その「機能しない美」を「機能する美」へ変える最後の一手である。

1964 年の東京オリンピックで、勝見勝・山下芳郎を中心とするグループが整備した日本初の体系的ピクトグラムは、世界の標準サインシステムの起点となった。「言葉に依存しない情報伝達」が国際大会で初めて実装された瞬間である。

現代の空港、駅、美術館 — どこに行っても矢印と図記号で迷わずに辿り着けるのは、半世紀前の 沈黙のデザイナーたち の功績である。

案内 (Identification)

「ここは何の場所か」を伝える。受付、エントランス、各部屋の表示。

— BLUE

誘導 (Direction)

「どこに行けばいいか」を矢印で示す。最も使用頻度の高い種類。

— GREEN

警告 (Warning)

「注意せよ」「危険あり」を伝える。施設の安全管理に不可欠。

— YELLOW

禁止 (Prohibition)

「これをしてはいけない」を伝える。喫煙禁止、立入禁止、撮影禁止。

— RED
— 02 / ISO 7010

ISO 規格の 四色

A universal grammar
— Mandatory · Information —

Blue

Mandatory action / 指示・情報

「これをせよ」「これがある」を示す色。案内、表示、義務行動。最も穏やかで安全な色として広く使われる。

RAL 5005 · #0067A0
— Prohibition · Fire —

Red

Prohibition / 禁止・消防

「してはいけない」を示す色。禁止記号は赤の円に斜線で世界共通。火災関連の表示にも用いられる。

RAL 3001 · #BF1922
— Safe Condition —

Green

Safe condition / 安全・避難

「安全」「避難経路」を示す色。非常口、応急処置、安全シャワー。緊急時に最も命を守る色。

RAL 6032 · #00794D
— Warning · Caution —

Yellow

Warning / 警告

「注意」「危険あり」を示す色。三角形の中に黒のシンボルが世界標準。工事現場、化学物質、高電圧。

RAL 1023 · #F2B411
— 03 / Four Types

サインの 四種

Identification · Direction · Information · Regulation
— Type 01 —

Identification

— 識別表示 —
Room 305 Conference Room

「ここは何の場所か」を伝える。建物のエントランス、各部屋のドア、施設のロゴサイン。最も基本的なサイン。

USE 部屋・施設・領域
— Type 02 —

Directional

— 誘導表示 —
Gate A1
Restrooms

矢印 + ラベルで「どちらへ行けばよいか」を伝える。空港、駅、病院 — もっとも頻繁に出会うサイン。

USE 通路 · 分岐点 · 階段
— Type 03 —

Informational

— 情報表示 —
Opening Hours Mon – Fri: 9:00 – 18:00
Sat – Sun: 10:00 – 17:00
Closed on Mondays

「ここでは何があるか」「どんなルールか」を伝える。営業時間、施設案内、料金表、地図。

USE 案内板 · 掲示 · 地図
— Type 04 —

Regulatory

— 規制表示 —
No Smoking
Caution: Wet Floor

禁止・警告・義務を伝える。法規・安全基準に関わるため、ISO 規格に準拠した形・色・配置が求められる。

USE 禁煙 · 立入禁止 · 警告
— 04 / Anatomy

サインの 解剖

Four parts in concert

サインは、
四つの部位で出来ている。

典型的なサインは、シンボル (ピクトグラム)テキストラベル矢印背景色 の四つの部位の組み合わせで成立する。

シンボルが意味を、テキストが具体性を、矢印が方向を、色がカテゴリを伝える。それぞれ独立した情報を担っているため、どれかが欠けても機能不全に陥る。

右の図は、典型的な空港サインの解剖図。番号①〜④の各部位が、それぞれ別の意味の層を運んでいる。

Pictogram — シンボル (意味) Text Label — 言語化されたラベル Arrow — 方向指示 Color Field — カテゴリ識別 (青=案内)
— ① Pict
— ② Label
Elevators
エレベーター
— ③ Arrow
— ④ Color: Mandatory Blue —
— 05 / History

ピクトグラムの 系譜

100 years of universal symbols
1936

Isotype

— Otto Neurath, Vienna

ウィーンで Otto Neurath が考案した「絵で量を語る」体系。ピクトグラムによる情報伝達という発想の原点。

1964

Tokyo Olympics

— 勝見勝 / 山下芳郎

東京オリンピックで初めて整備された体系的ピクトグラム。言語に依存しない国際大会という発想の原点で、現在の世界標準の起源。

1974

AIGA Symbol Signs

— US DOT & AIGA

米国運輸省と AIGA が共同開発した 50 種のサインセット。空港・駅・公共施設の標準として、現在も全世界で参照されている。