タイポグラフィは、文字をただ並べる技ではない。書体を選び、間 (ま) を測り、行を組むことで、ひとつの「考え方」を視覚化する仕事である。本号は、その解剖図譜だ。
すべての書体は、見えない四本の線の上に建てられている。キャップハイト、アセンダーライン、ミーンライン (x-height)、ベースライン、ディセンダーライン — この五本の地平が、書体の性格そのものを決める。
x-height が高ければモダンで読みやすく、低ければ古典的で優美になる。アセンダーが長く伸びれば書体は気高くなり、ディセンダーが深ければ落ち着きが出る。
ひと文字を覗き込むと、そこには建築のような構造が立ち上がっている。
文字列全体の字間を一律に詰める/開ける操作。小さな本文では狭く、大見出しでは詰める。逆に小文字を全大文字で組むときは、視覚的な詰まりを解消するため少し開けるのが鉄則。
特定の文字ペア間の間隔を個別に調整する操作。AV、Wa、To のような視覚的に空きすぎる組み合わせを、個別に詰める。良い書体は組み込みのカーニングペアを 1000 以上持つ。
行と行のあいだの距離。文字サイズの 1.4–1.6 倍が標準。和文では漢字の重さを考慮して、欧文よりやや広めに設計するのが常套手段。
欧文書体と和文書体は、同じポイント数でも視覚的な大きさが揃わない。欧文は大文字より小文字の方が小さく、x-height が低いほど「小さく見える」。一方、和文は字面いっぱいに描かれるため、相対的に大きく見える。
混植では欧文を 5–10% ほど大きく、ベースラインも微調整するのが基本。InDesign の「文字組み合成設定」や CSS の font-size-adjust がこれを補正する。
明朝体には伝統的なオールドスタイル・セリフ (Garamond, Caslon)、ゴシック体には Helvetica や Akzidenz のような中立サンセリフ — これが定石。混植は二つの書体ファミリーが同じ「気分」を持っているかが鍵となる。