Vol. 03 Spring 2026
— a specimen book —
Type / 字 / 0123 ABCDE
特集 / FEATURE No. 03

Type
& Letters

タイポグラフィは、文字をただ並べる技ではない。書体を選び、間 (ま) を測り、行を組むことで、ひとつの「考え方」を視覚化する仕事である。本号は、その解剖図譜だ。

— Chapter I / 解剖学 —

文字の解剖

すべての書体は、見えない四本の線の上に建てられている。キャップハイトアセンダーラインミーンライン (x-height)ベースラインディセンダーライン — この五本の地平が、書体の性格そのものを決める。

x-height が高ければモダンで読みやすく、低ければ古典的で優美になる。アセンダーが長く伸びれば書体は気高くなり、ディセンダーが深ければ落ち着きが出る。

ひと文字を覗き込むと、そこには建築のような構造が立ち上がっている。

Ascender
Cap Height
Mean / x-height
Baseline
Descender
Ag
DM Serif Display, 240 px
II

書体の分類

10 specimens / 欧文 + 和文
01
Old Style — オールドスタイル
Aa Garamond
15–17 世紀の活版印刷から発展した古典書体群。緩やかなコントラスト、傾いた応力軸、優しいセリフが特徴。長文の本文組に最も適し、人文主義の精神を継ぐ。
Sample / Cormorant Garamond
02
Transitional — トランジショナル
Aa Baskerville
18 世紀、Baskerville に代表される過渡期の書体。応力軸は垂直に近づき、コントラストが強まる。古典の温かさと近代の鋭さの中間に立つ。
Sample / Playfair Display
03
Modern / Didone — モダン
Aa Bodoni
18 世紀末以降の Bodoni、Didot 系。極端な太細のコントラスト、垂直の応力軸、ヘアライン・セリフ。優雅さと冷たさを併せ持ち、ファッション誌の表紙で愛される。
Sample / DM Serif Display
04
Slab Serif — スラブセリフ
Aa Slab
19 世紀の産業革命期に生まれた、四角く太いセリフを持つ書体。広告ポスター用に開発された経緯から、今も力強い見出しに似合う。「機械の時代の書体」。
Sample / Roboto Slab
05
Grotesque Sans — グロテスク・サンセリフ
AA SANS
19 世紀末以降の Akzidenz Grotesk、Helvetica の系譜。セリフを削ぎ落とし、機能と中立性を追求した。スイス・スタイルの中核となり、20 世紀の視覚言語を決定づけた。
Sample / Anton
06
Script / Hand — 筆記体・ハンド
Calligraphy
手書き、カリグラフィー、ブラッシュレタリングの伝統を引く書体群。人格と温度を持ち込むため、招待状やブランディングのアクセントに用いられる。本文には不向き。
Sample / Caveat
07
Monospaced — 等幅
[ 0123 ]
すべての文字が同じ幅を持つ書体。タイプライター、コーディング、技術文書のための実用書体だが、近年はそのリズム感ゆえに編集デザインのアクセントとしても再評価されている。
Sample / IBM Plex Mono
08
明朝体 — Mincho
明朝體
縦線が太く横線が細い、毛筆の運筆を持つ和文書体。長文の可読性に優れ、文学書・新聞本文・記念碑的な見出しに使われる。日本語のオールドスタイル。
Sample / Shippori Mincho
09
ゴシック体 — Gothic / Sans
ゴシック
線の太さが均一な和文の「サンセリフ」。視認性が高く、サイン、UI、見出し、本文と万能に使える。Noto Sans JP、ヒラギノ角ゴ、游ゴシックなどが現代の標準。
Sample / Noto Sans JP
10
Display — ディスプレイ専用
Display.
大きく組むことを前提に設計された、装飾性の高い書体群。本文には適さないが、見出し・ロゴ・ポスターでひと声の強さを発揮する。タイトルの個性そのもの。
Each one — its own voice
Type is a beautiful group of letters, not a group of beautiful letters.
— Matthew Carter
III

間 (あいだ) の設計。

Tracking · Kerning · Leading

Tracking / 字間

文字列全体の字間を一律に詰める/開ける操作。小さな本文では狭く、大見出しでは詰める。逆に小文字を全大文字で組むときは、視覚的な詰まりを解消するため少し開けるのが鉄則。

Ariatight / -8%
Arianormal / 0
Arialoose / +20%

Kerning / 詰め

特定の文字ペア間の間隔を個別に調整する操作。AV、Wa、To のような視覚的に空きすぎる組み合わせを、個別に詰める。良い書体は組み込みのカーニングペアを 1000 以上持つ。

AVATAR— before kern —
AVATAR— after kern —
PAIRS: AV · WA · TO · LY · YO · TY · PA

Leading / 行送り

行と行のあいだの距離。文字サイズの 1.4–1.6 倍が標準。和文では漢字の重さを考慮して、欧文よりやや広めに設計するのが常套手段。

IV

和文と欧文の混植。

Mixed Composition / 混植の文法
活字といふ建築。
The Architecture of Type.
— Shippori Mincho × DM Serif Display Italic / Gold —

サイズの調整

欧文書体と和文書体は、同じポイント数でも視覚的な大きさが揃わない。欧文は大文字より小文字の方が小さく、x-height が低いほど「小さく見える」。一方、和文は字面いっぱいに描かれるため、相対的に大きく見える。

混植では欧文を 5–10% ほど大きく、ベースラインも微調整するのが基本。InDesign の「文字組み合成設定」や CSS の font-size-adjust がこれを補正する。

性格のマッチング

明朝体には伝統的なオールドスタイル・セリフ (Garamond, Caslon)、ゴシック体には Helvetica や Akzidenz のような中立サンセリフ — これが定石。混植は二つの書体ファミリーが同じ「気分」を持っているかが鍵となる。

  • 明朝+ Garamond / Caslon
  • ゴシック+ Helvetica / Univers
  • 新ゴ+ Avenir / DIN
  • 游明朝+ Source Serif